切れ痔は油断大敵
切れ痔とは?
| 切れ痔の進行度数分類
| 切れ痔の治療
| コロンちゃんとおしりハカセのQ&A
切れ痔とは?

肛門粘膜の切れたものが、裂肛(切れ痔)です。
硬い便の通過や強いりきみで、肛門が無理に広げられることにより起こります。
排便時と排便後にずきずきとうずくような強い痛みや新鮮血の出血を指します。慢性的な裂肛症状を繰り返すと次第に肛門は狭くなり、より一層、肛門粘膜は切れやすくなります。
また、裂肛部の炎症により肛門粘膜に炎症性のポリープができる場合もあります。
初期の排便時痛や出血の段階では、便を軟らかくし、軟膏を塗れば改善しますが、慢性化すると体の組織の表面が炎症をおこし、くずれてしまう潰瘍を形成したり、肛門が狭くなる(肛門狭窄)と肛門を拡げ、慢性的に切れる粘膜の切除をする手術が必要になります。
また痔核が大きくなり脱肛を繰り返すようになるとその根元が慢性的に裂け、治療をしないと裂肛が改善しない場合があります。
ポイント!
- 切れ痔は痛い
- 切れ痔は真っ赤な出血
- 肛門ポリープという炎症性ポリープができることがある
- 切れ痔を繰り返していると肛門が狭くなってしまう
切れ痔の進行度数分類
- Ⅰ度
- 肛門上皮に軽い傷がある程度
- Ⅱ度
- 肛門上皮に浅い潰瘍(炎症)がある程度
- Ⅲ度
- 肛門上皮に深い潰瘍(炎症)があり、肛門ポリープが見られる
- Ⅳ度
- 慢性裂肛の繰り返しから肛門狭窄がおきている
切れ痔の治療
- Ⅰ度の治療
-
- 便通の改善
- 軟膏(座薬)により裂肛のむくみを抑える
- Ⅱ度の治療
-
- 便通の改善
- 軟膏(座薬)により裂肛のむくみを抑える
- 痛みがある場合は、痛み止めや痙攣性(けいれん)の痛みはニトログリセリンを含む軟膏の塗布
- Ⅲ度の治療
-
- 便通の改善
過去に治療歴があり、改善されていない場合や痛みが強い場合は肛門形成術(単純に裂肛あるいは潰瘍(炎症)を合併するいぼ痔、ポリープとともに切除した後、創傷遅延の予防と狭窄の解除を目的として同時に皮膚を移植する:SSG法を追加する)
肛門括約筋緊張の強いときや肛門狭窄があるときは側方内括約筋切開(LSIS)を施行する
- 便通の改善
- Ⅳ度の治療
-
- 便通の改善だけでは症状は改善されない
過去に治療歴があり改善されていない場合や痛みが強い場合は肛門形成術(単純に裂肛あるいは潰瘍(炎症)を合併するいぼ痔、ポリープとともに切除した後、創傷遅延の予防と狭窄の解除を目的として同時に皮膚を移植する:SSG法を追加する)
肛門括約筋緊張の強いときや肛門狭窄が強いときは側方内括約筋切開(LSIS)や、直視下に内括約筋切開を施行する
- 便通の改善だけでは症状は改善されない



「ねーねーおしりハカセ、切れ痔はなんでできるの?」

「コロンちゃんもトイレでうーん!ってきばってウンチをする時はないかい?硬いウンチや太いウンチが出たときは、おしりがピリピリ痛いでしょ?」

「うん。急いでウンチしちゃった時もそういう時あるよ。」

「うむ。肛門の拡がる太さを無理にウンチが通過する時に肛門が裂けてしまって、傷が切れ痔になるのじゃ。」

「便が緩くても、切れ痔になっちゃう人っているんでしょ?」

「うむ。コロンちゃん、手のしもやけは分かるかな?はじめはカサカサしてかゆいだけだけど、だんだん血が出てきてしまうこともある。肛門も下痢や軟便が続くと、同じように裂けてしまうのじゃ。」

「便秘でも下痢でもいけないって難しいー!」

「切れ痔は薬で治るの?」

「うむ。でも切れ痔が治るってどういうことだろう?いったん治っても、りきんだ瞬間や急いでトイレにかけ込んでウンチをした時に切れることもあるのじゃ。」

「そっか。治るってことじたい、難しい考え方なんだね。」

「浅いものや、たまたま切れたものはすぐに治る。まずはウンチを軟らかくしておくことが大事じゃ。そして、軟膏を塗っておくと痛みも出血もおちついてくる。それでも治らない時は、専門の先生に診てもらって対処を考えたほうがよさそうじゃ。でないと、どんどん悪くなってしまう。切れ痔は習慣になるのが一番怖いのじゃよ。」

「切れ痔はどうなったら手術を考えないといけないの?」

「何度も切れ痔を繰り返し肛門の粘膜が硬くなり、いつも同じ場所が切れる場合は、硬くなった粘膜を新しい粘膜に置き換えてあげる手術が有効じゃ。肛門がせまくなってきてしまった場合は、肛門を拡げてあげる処置をすれば劇的によくなることもあるのじゃ。」

「肛門がせまくなるってなーに?」

「どんな場所でも身体に傷が出来ると、その場所を修復しようとして周りの組織がひきつれて治ってくる。肛門も同じで、何度も切れ痔を繰り返していると、まわりがひきつれてきてしまって肛門がせまくなってしまう。それを肛門狭窄(こうもんきょうさく)と言うのじゃ。当然、肛門がせまければウンチがしづらくて肛門が裂けてしまう。それを治そうとしてまた肛門がせまくなる。その悪循環でどんどん悪くなってしまうのじゃ。」

「切れ痔の手術は入院しなきゃダメ?」

「そうとも言えない。肛門狭窄は肛門を締める筋肉を一部切開して、肛門を拡げる手術なら日帰り手術で十分可能じゃ。しかし通常はやはり1週間くらいの入院が必要になる。手術後は安静が必要じゃ。」

「でも、切れ痔の手術ってやっぱり痛いんじゃないの?」

「うむ。痛くないって言ったらウソになる。放っておいて治らずにいつまでも痛いのと、治して一時的に痛い。ではガマンも違う。昔に比べて痛み止めの薬もよくなってきているし、痔の専門の先生が手術を行うと、当然傷は最小限に抑えてくれるから、思ったほどではなかったという意見が多いのじゃ。肛門狭窄の手術をした人はずいぶん楽になるのじゃよ。」

「手術の時間はどのくらいかかるの?」

「麻酔をかけるのに約5,6分。そして肛門を拡げるだけなら約3分。実際に切れ痔の部分を切除して皮膚の一部をスライドさせる手術は約20分くらいじゃ。」

「えっ!そんなに短いの?」

「専門の先生が手術すればそんなものじゃ。」

「切れ痔の手術ってどのくらいお金がかかるの?」

「うむ。だいたい1週間の入院として計算すると、3割負担で約10万円くらいじゃ。
いい部屋に入院をしようとすると、差額ベット代というのが発生する。そのお金はまた別でかかってしまうのじゃ。」

「どこの病院でも値段は一緒なの?」

「切れ痔の手術のお金としてはどこも一緒じゃ。」

「退院してどのくらいで仕事が始められるの?」

「基本的には次の日からでも良い。ただし、おしりに負担のかかる力仕事や運動をする人は自分の状態と相談しながらゆっくり始めることじゃ。日常生活には問題はなくても、負担がかかると浮腫んだりしてしまう可能性もある。」

「手術をしたらもう切れ痔にならないわけじゃないんだね?」

「うむ。肛門がせまかった人が拡くなったらずいぶんと調子がよくなると思うが、便秘がちであったり、りきみ癖のある人は生活環境を気をつけないとまた悪くなってしまうのじゃよ。」