痔ろう(穴痔)はアリの巣
痔ろう(穴痔)とは?

痔ろうとは肛門の奥(直腸との境)にバイ菌が入り込み肛門の周りに作ってしまった巣のことです。
この巣は、バイ菌の活動と供に膿(うみ)を貯め肛門周囲膿瘍という状態になると痛みや肛門の腫れを伴いますが、落ち着いているときには痛みは少なく硬い索状物として触れたり皮膚の穴から膿(うみ)が出たり、かゆみを伴ったりします。
しかし放っておくと膿(うみ)を貯めるのを繰り返し、その度に巣が複雑化してしまうので早いうちに巣を切除しなければいけません。(入院5日~14日)
ポイント!
- 肛門周囲膿瘍は痛いが、痔ろうの段階だと痛くない
- 肛門周囲膿瘍はまず膿(うみ)を出し炎症を鎮める必要がある
- 痔ろうは手術で切除しないと治らない
- 肛門周囲膿瘍を繰り返すとその度に痔ろうが複雑化してしまうので早めの処置が必要
- (1)肛門の奥にある肛門陰かに細菌が進入し肛門腺に感染する
- (2)膿瘍(うみ)を形成すると肛門の周りが腫れて激しい痛みが続きます。発熱を伴う場合もあります
溜まった膿瘍(うみ)が破裂し肛門外に出ると症状は楽になりますが、その後に管が残り痔ろうとなります - (3)硬い索状物が残り、膿瘍(うみ)の混じった分泌液が出たり、肛門の周りに、湿疹や皮膚炎などができてかゆみや不快感を感じる事があります
痔ろうのできる原因
- 下痢症(肛門腺に便が入りやすい)
- 排便時に強くいきむ
- 先天的に肛門陰窩が深い
- 疲労やストレスにより肛門内の局所免疫が低下し、わずかの刺激で炎症が起きる
などがあげられますが、ほとんどの場合、運が左右するといわれています。
また、痔瘻の80%は男性(男性は女性よりも肛門陰窩が大きくて深いので細菌が入りやすいこと、肛門括約筋の力が強く、肛門陰窩に細菌が押し込まれやすいためといわれています。)というように男性がかかりやすい疾患です。
痔ろうの分類
痔ろうの形態的な分類
症状 | 痔ろうの型 | 括約筋と痔ろうの関係 | |||
---|---|---|---|---|---|
軽度![]() | I型 | 皮下また 粘膜下痔ろう | IL | 皮下痔ろう | 肛門の皮膚と内括約筋との間を下に降りてくるもの |
IH | 粘膜下痔ろう | 肛門の皮膚と内括約筋との間を上にいくもの | |||
Ⅱ型 | 内外括約筋間痔ろう | ⅡL | 低位筋間痔ろう | 内括約筋と外括約筋の間を下に降りてくるもの | |
ⅡH | 高位筋間痔ろう | 内括約筋と外括約筋の間を上にいくもの | |||
Ⅲ型 | 坐骨直腸窩(肛門挙筋下)痔ろう | 外括約筋の外側を通るもの | |||
Ⅳ型 | 骨盤直腸窩(肛門挙筋上)痔ろう | 肛門挙筋上を通るもの |
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深部痔ろう
Ⅲ型,Ⅳ型を深部痔ろうといいます。
下記の図のように連合縦走筋をバイ菌が貫きさらに深い組織へ進んだ状態です。

痔ろうの治療
Ⅰ型痔ろう | ろう管切開開放術 |
---|---|
ⅡH型痔ろう | ろう管切開開放術 |
ⅡL型痔ろう | ろう管切開開放術、ろう管くりぬき術、セトン法 |
Ⅲ型痔ろう | くりぬき型(T-A法)肛門上皮、肛門括約筋完全保存術・筋縫合、筋充填型 肛門括約筋肛門保護術 |
Ⅳ型痔ろう | くりぬき型(T-A法) 肛門上皮、肛門括約筋完全保存術・筋縫合、筋充填型 肛門括約筋肛門保護術・切開開放ドレナージ術 |
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